行動経済学会ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部 優秀論文賞

ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部優秀論文賞(ヤフー賞)について

ヤフー賞は、国際的な行動経済学関連研究を推進するため、2018年に創設されました。過去5年間に国際的学術雑誌に掲載された論文の中から、特に優れた国際的論文を執筆した学会員の著者に授与されます。(後援:ヤフー株式会社)

審査対象

国際的学術誌に過去5年間に掲載された論文の中から選考

選考方法

選考委員会が審議の上、海外委員の投票で受賞論文を決定する。

授与頻度

毎年

授与するもの

賞金30万円、盾、および賞状

授賞式

行動経済学会大会(総会)において、授賞式を執り行う。

第4回ヤフー株式会社金融統括本部優秀論文賞 選考結果

受賞論文:”Do Risk Preferences Change? Evidence from the Great East Japan Earthquake” by Chie Hanaoka, Hitoshi Shigeoka, and Yasutora Watanabe
(2018), American Economic Journal: Applied Economics, vol.10, No.2: 298-330.

受賞者:花岡智恵(東洋大学),重岡仁(東京大学大学院),渡辺安虎(東京大学大学院)

第4回ヤフー賞選考委員会委員長 犬飼佳吾

第3回ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部優秀論文賞 選考結果

受賞論文:”Rawlsian maximin rule operates as a common cognitive anchor in distributive justice and risky decisions” by Tatsuya Kameda, Keigo Inukai, Satomi Higuchi, Akitoshi Ogawa, Hackjin Kim, Tetsuya Matsuda, and Masamich Sakagami
(2016), Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America, vol. 113, no. 42, 1817–1822.

受賞者:亀田達也(東京大学),犬飼佳吾(明治学院大学),小川昭利(順天堂大学),坂上雅道(玉川大学)

講評

他者の分配に関する意思決定と不確実性下の意思決定という2つの異なる状況下において、最も低い利得を考慮するというマキシミンを考慮した思考がどのように関連するかを、マウストラッキングを用いた実験室実験およびfMRI実験により分析した。実験の結果、マキシミンを考慮した思考は、社会的分配とギャンブルという2つの異なる状況下に共通して強く作用することが明らかになった。これら2つの状況はそれぞれが単独で重要な問題であり、それらの問題で共通した認知および神経基盤が作用している可能性を示唆した点が高く評価された。

第3回ヤフー賞選考委員会委員長 室岡健志

選考委員会

室岡健志(委員長:大坂大学)
依田高典(副委員長:京都大学)
Colin F. Camerer (California Institute of Technology)
大垣昌夫(慶應義塾大学)
大竹文雄(大阪大学)
岡田克彦(関西学院大学)
George F. Loewenstein (Carnegie Mellon University)
Laura Schechter (University of Wisconsin-Madison)

第2回ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部優秀論文賞 選考結果

海外委員による投票が同点の最高得点であった2本の論文が受賞しました。受賞論文の発刊年順で掲載します。

受賞論文:”Inferior Products and Profitable Deception” by Paul Heidhues, Botond Kőszegi, and Takeshi Murooka
(2017), The Review of Economic Studies, 84(1): 323-356.

受賞者:室岡健志(大阪大学)

講評

本論文は、ナイーブな消費者が無視してしまうような追加的な価格設定をする企業が競争的な小売市場において存続しうるかを理論的に検証するという大局観をもった研究である。競争により欺瞞や低品質の製品が競争市場から駆逐されるとは限らない。むしろ、その全く逆であることをナイーブな消費者の存在を前提にして示した。理論の構成とともに消費者と生産者間のフィールドでの介入実験を含む将来の実証研究へ豊かな含意を含んでいるところが高く評価された。

受賞論文:”Moral Suasion and Economic Incentives: Field Experimental Evidence from Energy Demand” by
Koichiro Ito, Takanori Ida, Makoto Tanaka
(2018), American Economic Journal: Economic Policy, 10(1): 240-267.

受賞者:伊藤公一朗(シカゴ大学)・依田高典(京都大学)・田中誠(政策研究大学院大学)

講評

本論文は、電力需要のピーク時間帯における節電行動を促すための手法として、伝統的経済学的手法である動学的価格づけと行動経済学的手法である道徳的説得の相対的有効性を比較している。その結果、動学的価格づけによる金銭的インセンティブでより大きな効果があり、長期的に持続したこと、道徳的説得は時間とともに効果が小さくなったことを示した。優れた大局観をもった非常に重要でエレガントな論文であると評価された。特に、行動経済学的手法と伝統経済学的手法の相対的有効性を比較し、その長期の効果を計測した研究は他にない点が優れている。

第2回ヤフー賞選考委員会委員長 大竹文雄

選考委員会

大竹文雄(委員長:大阪大学)
Dirk Engelmann (Humboldt-University Berlin)
Paul J. Ferraro (Johns Hopkins University)
星野崇宏(慶應義塾大学)
池田新介(関西学院大学)
George F. Loewenstein (Carnegie Mellon University)
岡田克彦(関西学院大学)
大垣昌夫(慶應義塾大学)
竹内幹(一橋大学)

第1回ヤフー株式会社コマースカンパニー金融統括本部優秀論文賞 選考結果

受賞論文:”Neural Mechanisms of Gain-Loss Asymmetry in Temporal Discounting” by
Saori C. Tanaka, Katsunori Yamada, Hiroyasu Yoneda, and Fumio Ohtake
(2014), Jouranal of Neuroscience, 34(16): 5595-5602.

受賞者:大竹文雄(大阪大学)、田中沙織((株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR))

講評

本論文は、通時選択のタスクで時間割引のサイン効果を示すグループと示さないグループの脳活動を比較した。著者らは頭皮質と線条体の活動でこれらのグループに有意な違いを発見した。また遅延の長さは頭皮質の活動に、大きさへの感応度は線条体の活動に関係していることを示した。サイン効果は肥満や多重負債などの問題に関係していることは文献で示されていたが、サイン効果の神経経済学基礎を示した点が重要な貢献である。

第1回ヤフー賞選考委員会委員長 大垣昌夫

選考委員会

大垣昌夫(委員長:慶應義塾大学)
Jan Engelmann(University of Amsterdam)
星野崇宏(慶應義塾大学)
依田高典(京都大学)
Alexander K. Koch (Aarhus University)
Axel Ockenfels (University of Cologne)
岡田克彦(関西学院大学)
竹内幹(一橋大学)