学生論文コンテストについて
行動経済学会では、新たな会員の参加を促進し、また、若い研究者の活動や交流を支援するため、学部学生、修士課程学生の論文とプレゼンテーションを審査する学生論文コンテストを2018年より開催しています。学部学生部門と修士課程学生部門 のそれぞれにおいて、最優秀賞・優秀賞を選考し、受賞者には賞金が授与されます。
第4回 学生論文コンテスト 選考結果 (2021年)
発表動画による1次審査、口頭発表による2次審査、論文の査読、そして視聴者による投票に基づき、受賞者を以下のように決定しました。
1.学部学生部門
【最優秀賞】
該当者なし
【優秀賞】
髙橋 茉優 氏(東京大学)
「経済格差の大小は再分配意思決定に影響するか」
2.修士学生部門
【最優秀賞】
該当者なし
【優秀賞】
該当者なし
3.聴衆賞
宮崎 聖人 氏(広島大学)
「データから物理法則を発見する人工知能:AI-Feynmanの成果と課題,及び行動科学への応用」
*所属は応募時のものです。
【総 評】
行動経済学の現状と将来の可能性を反映して、心理学や物理学等、幅広い分野から論文が寄せられ、審査員一同、興味深く拝見しました。
学部生部門8件、修士学生部門1件の応募があり、発表動画に基づく1次審査により学部学生部門5件、修士学生部門1件が2次審査に進みました。オンライン公開制の2次審査では、口頭発表および論文査読に基づく最優秀賞・優秀賞の審査、また視聴者の投票に基づく聴衆賞の決定が行われました。
1次審査を通過したどの論文も、学生の論文としては優れたものであるというのが審査員の一致した評価です。2次審査では、受賞論文が(学生論文と明記した上でですが)学会誌に掲載されることから、学術論文としての完成度やその研究の学会への貢献の程度からも審査されました。
総じて、どの論文も理論的分析が手薄である印象を受けました。経済学の研究では、実験や実証の研究であっても、その仮説形成や分析結果の解釈・評価においては、単なる思い付きで終わらないためにも、しかるべき理論的裏付けの基に行うべきものです。その点はぜひ今後の課題としていただきたいと思います。
修士学生部門では、残念ながら今回は該当者なしとなりました。
学部学生部門の優秀賞に選ばれた高橋論文については、給付金の配分方法という社会的に意義のある話題と関連するテーマである点と、比較的多くの実験参加者を用いて適切な実験計画の基に実験を行い、データ分析を行っている点が評価されました。ただし、リスク選好が結果に与える影響について行動経済学的分析が不足している点や、実験計画において社会的配分を第三者的視点で行わせている上に実験報酬が一律であるために、選択に十分なインセンティブが与えられていない点など、経済学研究の標準から見れば問題とされる点が指摘されました。
視聴者の投票の結果、聴衆賞に選ばれた宮崎論文は、時間割引関数の推定に際し、経済学の研究では目新しい、データから関数のパラメータではなく関数形を推定する記号回帰という手法を用いている点が評価されました。ただし、そのデータ取得手法には問題があり、また、記号回帰が威力を発揮する研究領域については再考の余地がある点などが審査員からは指摘されています。
惜しくも受賞を逃したその他の論文につきましても、それぞれ価値のある研究となるポテンシャルを有していると評価されています。審査員が作成した査読報告書を基に適切な改訂がなされれば、将来的に有望な研究になることが期待されます。引き続き行動経済学会等でその成果を拝見できる機会を、審査員一同楽しみにしています。
なお、受賞者の表彰は第15回行動経済学会大会(成城大学/12月)にて行われます。
第4回学生論文コンテスト審査委員
川越 敏司(審査委員長)
森 知晴(審査副委員長)
和泉 潔
犬飼 佳吾
佐々木 周作
高橋 秀徳
田口 聡志
室岡 健志
山村 英司
第3回 学生論文コンテスト 選考結果 (2020年)
論文と口頭発表両方の審査により、以下のように決定いたしました。
1.学部学生部門
【最優秀賞】
森 峻人 氏(慶應義塾大学)
「時間割引率とその関連変数の心理的背景要因に関する実証研究~大規模シングルソースデータベース等を用いて~」
【優秀賞】
室田 誠 氏・齋藤 祐也 氏(信州大学)
「罰則の有無による行動の違いと保険加入行動との関係」
2.修士学生部門
【最優秀賞】
該当者なし
【優秀賞】
安藤 希 氏(一橋大学)
「教育が損失先送り効果に与える因果効果~投資家の異質性を考慮したRCTによる実証分析~」
*所属は応募時のものです。
【総 評】
行動経済学の現状を反映して、テーマも方法も広い範囲にわたった論文が多数寄せられました。どの論文にも創意と工夫の跡が見られます。
応募総数11件を数える今回の学部生部門では、一次審査合格7件、受賞論文2件という厳しい選考になりました。二次審査を通過したどの論文も、学部生の論文として優れた研究成果だというのが審査委員の一致した評価です。
卓越した論文を本コンテストにご応募いただきありがとうございました。
学部学生部門の最優秀賞に選ばれた森論文は、メタ分析をふくめた綿密な分析によって、時間割引の決定因を心理学と経済学の学際的な観点から解明した点が高く評価されました。
同部門優秀賞の室田・齋藤論文は、独自性の高いアイデアを確かな実証手続きで研究成果に結実させた手腕が評価されました。
修士学生部門優秀賞の安藤論文は、コンピューターネットワークの模擬市場を使って、気質効果と投資教育、投資家の認知特性の3者の関係を考察した新規性が評価されました。
受賞者の表彰は第14回行動経済学会大会(オンライン/12月12日~13日)にて行われました。
第3回学生論文コンテスト審査委員
池田 新介(審査委員長)
犬飼 佳吾(審査副委員長)
佐々木 周作
高橋 秀徳
竹内 幹
林 良平
山根 承子
第2回 学生論文コンテスト 選考結果 (2019年)
論文と口頭発表両方の審査により、以下のように決定いたしました。
1.学部学生部門
【最優秀賞】
該当なし
【優秀賞】
2.修士学生部門
【最優秀賞】
丹治伶峰 氏(大阪大学)“Reference Dependence and Monetary Incentive‐Evidence from Major League Baseball‐”
【優秀賞】
加藤大貴 氏(大阪大学)“Is Altruistic Behavior Addictive? Empirical Evidence in Japan”
*所属は応募時のものです。
【総 評】
非常に高いレベルの論文が多く集まり、審査員一同楽しく審査を行えました。
学生らしい発想の研究、緻密な分析を試みた研究、社会的意義の高い研究などいずれも甲乙つけがたいものでした。
受賞者の表彰は第13回行動経済学会大会(名古屋商科大学/11月9日~10日)にて行います。
第2回学生論文コンテスト審査委員
筒井 義郎(審査委員長)
山根 承子(審査副委員長)
尾崎 祐介
久米 功一
佐々木 周作
布施 匡章
山崎 尚志
第1回 学生論文コンテスト 選考結果 (2018年)
1.学部学生部門
【最優秀賞】
「カデンツの法則の経済理論と実証分析:コード進行の歴史的発展法則」
慶應義塾大学経済学部経済学科 齋藤 建文氏
【優秀賞】
近畿大学経済学部経済学科 岡 千紘氏
慶應義塾大学経済学部 清水 祐弥氏
東京理科大学経営学部経営学科 中上 晨介氏
2.修士学生部門
【最優秀賞】
該当なし。
【優秀賞】
「出生時体重が将来の成果に与える影響について」
近畿大学大学院経済学研究科 福永 あずさ氏
第1回学生論文コンテスト審査委員
大竹 文雄(審査委員長)
林 良平(審査副委員長)
池田 新介
川越 敏司
山根 承子