アサヒビール最優秀論文賞について
行動経済学の研究振興を図ることを目的として、2010年に創設されました。学会機関誌『行動経済学』に掲載された査読論文の中から最も重要な学術研究として認められる論文に対し、授与いたします。
最優秀論文賞とは
行動経済学の研究振興を図ることを目的として、2010年に創設されました。学会機関誌『行動経済学』に掲載された査読論文の中から最も重要な学術研究として認められる論文に授与いたします。
(後援:アサヒビール株式会社)
審査対象
対象年の学会機関誌『行動経済学』に掲載された査読論文(大会プロシーディングスを除く)。
Survey 論文については対象外とする。招待論文については、選考委員会で判断する。
選考方法
選考委員会で審議の上、決定する。
授与頻度
当面の間は隔年とする。
授与するもの
賞金20万円、盾、および賞状 (ただし、複数論文を選出した場合の賞金は等分とする。)
授賞式
行動経済学会大会(総会)において、授賞式を執り行う。
受賞論文の英訳
日本語論文の英語版を作成する場合、英語校正費用として最大5万円を必要に応じて支給する。
第6回アサヒビール最優秀論文賞 選考結果
Shinsuke Asakawa
“Can Child Benefits Shape Parents’ Child-rearing Preferences in Japan?
Effects of Child Benefit Policy Expansions“
『行動経済学』第14巻、26-46
第5回アサヒビール最優秀論文賞 選考結果
久米 功一,鶴 光太郎,佐野 晋平,安井 健悟
「社会保障の給付負担に対する選択を決定する要因は何か―個人の意識の役割」
『行動経済学』第11巻、54-74
第4回アサヒビール最優秀論文賞 選考結果
黒川 博文、佐々木 周作、大竹 文雄
「長時間労働の特性と働き方改革の効果」
『行動経済学』第10巻、50-66
講評
長時間労働という現代日本の喫緊の問題について、1企業のユニークなフィールドパネルデータを用いて、労働者の行動特性と企業側の人事管理政策の双方から分析した優れた研究である。周到な実証手続きにもとづいて問題の行動経済学的な側面を明らかにし、人事制度の評価と政策提言を行った貢献は高く評価される。
第四回アサヒビール最優秀論文賞選考委員会委員長 池田新介
第3回アサヒビール最優秀論文賞 選考結果
小幡 績、太宰 北斗
「競馬とプロスペクト理論:微小確率の過大評価の実証分析」
『行動経済学』第7巻、 1-18
講評
日本中央競馬会のいわゆる三連単馬券の売り上げ(得票)データというきわめてユニークな大規模(千万弱)フィールドデータを用いて、プロスペクト理論における過剰加重(overweighting)とそこから発生する大穴バイアスを検出している。いくつかの非本質的な問題点(代替的な推定モデルによる頑健性のチェックが必要、価値関数が危険愛好的である可能性を最初から排除していることについての言及が必要)があるものの、結果は明確であり、モチベーションと含意のはっきりした好論文である。行動経済学会機関誌ならではの論文として授賞にふさわしい。そもそも貢献に照らして英語で公刊されるべき論文であり、同論文が受賞して英語化される機会が与えられることは行動経済学の進展に大きく資するだろう。
第三回アサヒビール最優秀論文賞選考委員会委員長 依田高典
第2回アサヒビール最優秀論文賞 選考結果
顧 濤、中川 雅之、齊藤 誠、山鹿 久木 著
「東京都における地域危険度ランキングの変化が地価の相対水準に及ぼす非対称的な影響について: 市場データによるプロスペクト理論の検証」
『行動経済学』第4巻、1-19
講評
本論文は、プロスペクト理論の妥当性を現実のデータを用いて検討しようという野心的な試みである。2000年以降の都市再開発という自然実験環境を利用したパネル分析によって、東京都における地域危険度ランキングの変化が地価の相対水準にどのような影響を与えたかを丁寧に実証し、その結果をプロスペクト理論によって解釈している。膨大なデータを用いて、複雑な定式化を工夫した研究であり、結果の頑健性のチェックも入念におこなっていて、説得力の高い実証結果を得ることに成功している。その貢献の独創性から、同論文に第二回アサヒビール最優秀論文賞を授与することに決定した。
第二回アサヒビール最優秀論文賞選考委員会委員長 筒井義郎
第1回受賞者(学会誌Vol.1-3対象)
盛本晶子氏(大阪大学)「双曲割引と消費行動」 行動経済学 Vol.2,49-59
講評
レイブソンらによって理論的に明らかにされているように、非流動資産は自制問題下のコミットメント手段として利用できるので、双曲的な消費者の限界消費性向は資産の流動性が高いほど高く、それが低いほど低くなることが予想される。
盛本論文は、消費行動と時間割引の両方を含むユニークなデータを用いて、こうした理論仮説が実際に支持されることを適切な統計手法を用いて文献上初めて示した研究として、高く評価される。その貢献の独創性から、同論文に第一回アサヒビール最優秀論文賞を授与することに決定した。